ジュール・ベルヌの傑作『海底二万里』でノーチラス号が遭遇したミルキーシーmilky sea、光り輝く海の存在は、実際に昔から船乗りの間で語り継がれてきた。それは、真っ暗なはずの夜の海が見渡す限り眩しく光り輝いているのだという。

この現象について今のところ十分な証拠に基づいた見解は示されていない。しかしながら人工衛星でもってその存在をはっきりと確認したことで、ミルキーシーの調査は飛躍的に進展し、より詳細な研究へと駒を進めることが出来るのではないかと期待が持たれている。
公表された人工衛星の画像データには、インド洋において光り輝くミルキーシーが広範囲にわたって映し出されている。また記録からは、同海域においてその現象が三夜に渡って連続で起きたことが確認されている。そしてそのルミネッセンス(無熱光)は同海域を航海していた一隻の船からも目撃されている。
NRL(米国海軍研究所)所属の科学者で、人工衛星を利用してミルキーシーの発見に貢献したスティーブン・ミラー氏Steven Millerは語る。「ミルキーシーが出現する条件や状況といった事柄については現在のところまったくと言っていいほど解明されていません。それどころか、このルミネッセンスを放出している光源の詳細についてさえ、科学者達の間では見解が分かれているというのが現状です。」
光源に関する一つの仮説
その中の一つとして、この現象が、その海域に生息する発光バクテリアの一種によって引き起こされているのではないかとする見解が挙げらている。科学者達がその存在を疑っているのは、荒波や航跡(船が進む際に出来る波跡)に反応して瞬間的に強烈な光を発する一般的な渦鞭毛藻類(うずべんもうそうるい)とは対照的な存在、即ち、継続的に一定の光を放出し続けるバクテリアについてである。
ミラー氏は語る。「仮にこの仮説が正しいとするならば、ミルキーシーが出現する海域にはこの種のバクテリアが極度に集中して存在していることになります。しかし、一体いかなる要因がそのようにバクテリアを一定海域に集中せしめることが出来るのでしょうか?この点に関してはまだ議論の余地が残っています。」
この疑問について、実際に海上でミルキーシーに出くわしたことのある専門家からは、そのバクテリアは世界中の海で生息しているような種ではなく、特定の海域だけに見られる何らかの"基盤"に依存している存在なのではないか、との見解がなされている。
ミラー氏は言う。「近年行われた調査の結果、発光バクテリアの中には藻類ブルームに依存して群生する仲間もいることが確認されました。」
「この調査報告なども踏まえ、我々が現在のことろ導き出したベストの仮説として、ミルキーシーとは、その海域特有の有機物質に依存して群生する発光バクテリアによって引き起こされている、ということが言えると思います。」
「ミルキーシーが人工衛星によって確認されるようになった現在、この先うまくいけば、我々はその出現時期そして出現場所を前もって的確に予想し、準備万全の状態でその海域に調査船を送り込むことが可能になるかもしれません。そうなれば、この現象の謎を解き明かすこともそう遠い未来の話ではなくなるでしょう。」
謎に包まれた広大な海
人工衛星が初めてミルキーシーの姿を捉えたのは1995年のこと。その後、それに関するあらゆる調査が行われ、先週出版されたPNAS(科学アカデミー会報)に、調査の最終報告が掲載されている。
ミルキーシーの調査を通じて、我々人類が海について知っていることがいかに少ないかということを改めて痛感させられることとなった。
ミルキーシーの出現が最も多く記録されている海域は、インド洋のインドネシア近海である。同海域は貿易ルートが数多く通っているところでもある。
ミラー氏は言う。「もちろん、我々が把握していないあらゆる海域でもこの現象が起きていることでしょう。我々は、世界中からミルキーシーの目撃証言を募る試みを開始しており、実際に今まで受けた報告の中には、我々が予想だにしなかった海域からの報告も幾つか含まれていました。その報告と人工衛星のデータとをマッチングしならが、ミルキーシーが出現した海域を突き止め、更なる研究、発見に努めています。」
【source】- Satellite images confirm mystery glow in ocean(MSNBC.com)
- [追加]光る海(エルエル)

